『開目抄』

【成立の背景】

松葉ヶ谷(まつばがやつ)法難・伊豆流罪・小松原法難・龍口(たつのくち)法難に続き、佐渡に流された聖人は、@教団崩壊の危機を感じこれに対処するため、A仏の使いである自覚を表明するため、B弟子信者へのかたみとして、五十一歳にあたる文永(ぶんねい)九年(1272)二月、佐渡ヶ島の塚原三昧堂で著された。

【題意】

開目とは、信仰に迷う人々に正しい教えを示すこと、つまり文字通り目を開かせることである。一つには法華経こそが末法の衆生を救済する法であるということ。二つにはそれを伝えるべき導師は聖人自身であるということ。この二面について明らかにしているので、自ら『開目抄』と名付けられた。

【内容】

全体は、@インド・中国・日本のあらゆる教えの頂点に法華経があることを述べ、A迫害の体験の中で仏の使いであることを確信され、B時代と世相を熟慮して布教しなければいけないと示されている。本文はAの部分。

【理解のポイント】

三大誓願とは、主師親の三徳を表したものだといわれている。柱は主(あるじ)として日本国を支え、眼目は師匠として未来を指し示し、大船は親として衆生を導く。私たちはこの三大誓願をしっかりと受け止め、宗祖の厚い恩に応えなければならない。

【直筆】

かつて身延山にあったが、明治八年の大火で焼失した。


『開目抄』   昭和定本日蓮聖人遺文

詮ずるところは天もすて給え、諸難にもあえ、身命を期とせん。身子が六十劫の菩薩の行を退せし、乞現の婆羅門の責を堪えざるゆえ。久遠大通の者の三五の塵をふる、悪知識に値ゆえなり。善に付け悪につけ法華経をすつる、地獄の業なるべし。本と願を立つ。日本国の位をゆづらん、法華経をすてて観経等について後生をごせよ。父母の頸を刎、念仏申さずば。なんどの種種の大難出来すとも、智者に我義やぶられずば用いじとなり。其外の大難、風の前の塵なるべし。我れ日本の柱とならん、我れ日本の眼目とならん、我れ日本の大船とならん、等とちかいし願、やぶるべからず。

現代語訳
つきつめていえば、天に捨てられ、諸難にあうこともいとわない。法華経のために命を捨てる覚悟はできている。
身子が長い菩薩の修行に挫折したのは、「あなたの目がほしい」という婆羅門の求めに応じられなかったからです。
如来寿量品では五百億塵点劫の昔に、久遠の仏さまから成仏の種をいただいたと説かれています。化城喩品には三千塵点劫の昔に、大通智勝仏から仏の種をいただいたと説かれています。それなのに今まで成仏できずにいるのは、誤った考えを持った人を師匠としたからです。
理由がどうあっても、法華経の信仰を捨てることは、地獄に落ちる行いです。
清澄で初めてお題目を唱えて以来、総ての人々を救うという願いをもってお題目を唱えています。
日本の国をやるから法華経をすてて阿弥陀経の教えで成仏を願えとか、念仏を唱えなければ父母の首を切るぞ等と、信仰を邪魔されても、仏法の道理を知りつくした人に、まちがいを指摘されるのでなければ、信仰を改めることはありえません。
そのほかの信仰の妨げは、風の前の塵のようなものです。

我れ日本の柱とならん!
我れ日本の眼目とならん!
我れ日本の大船とならん!

との三大誓願は、決してやぶらない。

【用語解説】

身子が六十劫の・・・身子は舎利弗(しゃりほつ)のこと。劫とは、想像できないほどの永い時間を表す時間の単位。舎利弗が六十劫もの長い間、菩薩行としての施しを続けていた時、一人の婆羅門に眼(まなこ)を請われた。片方の眼を与えたが、それは捨てられて残った方の眼も求められた。これに腹を立てたため、それまでの修行が無となり、成仏から遠ざかった。

婆羅門・・・宗教者で、インドのバラモン教による社会階層の最上位をいう。

久遠大通・・・久遠は久遠下種(くおんげしゅ)のこと。如来寿量品に説かれている。五百塵点劫のはるかな昔、人々はお釈迦さまに下種結縁(げしゅけちえん 人の心に仏の種を植えて成仏の縁を結ぶ)されている。大通は大通結縁のこと。化城喩品に説かれている。三千塵点劫という遠い昔、大通智勝仏(だいつうちしょうぶつ)が十六王子に法華経を説いて下種結縁し、十六王子がさらに多くの人に下種結縁した。

三五の塵をふる・・・三は先の化城喩品の三千塵点劫。五は如来寿量品の五百塵点劫。塵をふるとは、下種結縁を受けながら法華経の信心を捨てて今日まで不成仏であること。

悪知識・・・仏道修行をさまたげる悪友悪師のこと。

本と願・・・旭ヶ森で立教の決意として初めてお題目を唱えた時に誓った願。『開目抄』では三大誓願として顕わされた。

観経等・・・『観無量寿経』『阿弥陀経』『無量寿経』の浄土三部経のこと。

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